給湯器の法定点検は義務?点検内容と費用、受けないとどうなるか解説します

給湯器の「法定点検」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
毎日使用する給湯器は年数が経つと劣化し、思わぬ事故を引き起こす可能性があります。
自宅の給湯器が点検対象なのか、費用はどれくらいかかるのか、点検を受けなかった場合のリスクについても知っておくことが大切です。
本記事では給湯器の法定点検について分かりやすく解説します。
目次
給湯器の法定点検とは?制度の概要と対象製品
経年劣化による事故防止を目的とした国の制度が法定点検です。
どのような給湯器が対象となるか、いつ点検を受けるべきか基本情報を押さえておきましょう。
長期使用製品安全点検制度に基づく法定点検
法定点検は経済産業省が2009年4月から施行した「長期使用製品安全点検制度」に基づく制度です。
長年使用することで劣化し、火災や死亡事故などの重大事故を起こす可能性がある製品を「特定保守製品」と指定し、製造事業者や輸入事業者による点検を促進しています。
長く使うことで劣化し、重大な事故をおこす恐れがある特定の製品について、所有者がメーカーの有償点検を受けることを義務付けた制度です。
製品購入時に販売店から説明を受け、所有者登録をすることで点検時期になるとメーカーから通知が届きます。
制度の根幹には消費者の安全を守るという目的があり、対象製品を使い続ける場合には、設計標準使用期間を超える前に専門的な点検を受けることが求められています。
法定点検の対象となる給湯器
2025年時点で法定点検が必要な給湯器は「石油給湯器」と「石油ふろがま」の2種類です。
ガス給湯器や電気温水器、エコキュートは法定点検の対象外となります。
石油給湯器は、長期間使用することで経年劣化が進み、灯油漏れによる火災や部品の劣化による火の粉の飛散や着火不良による爆発を伴う火災など、重大な事故が発生するリスクが高まります。
可燃性の灯油を使用しており、劣化した部品や配管からの漏れや不具合が重大事故につながりやすいため、所有者に法定点検を受けることが求められているのです。
特定保守製品であるかどうかが分からない場合はメーカーや販売店に問い合わせるとよいでしょう。
法定点検の時期と回数
石油給湯器の設計標準使用期間は10年と定められています。
製造から9年~11年の間に1度、法定点検を受けることが推奨されています。
点検時期が近づくと、所有者登録をしている人にはメーカーから案内が送られてくるでしょう。
点検は製品の寿命期間中に1回のみ行うもので、複数回受ける必要はありません。
案内が届いたら速やかに連絡して点検を受けましょう。
所有者登録をしていない場合でも、製造年月は製品本体に記載されているため、購入後10年前後が点検時期の目安になります。
不明な場合は型番をメーカーに伝えれば確認が可能です。
給湯器の法定点検は義務?責務との違いは?
法定点検は法律で定められていますが、実際のところ「義務」なのでしょうか。
受けなかった場合にはどのようなリスクがあるのか解説します。
「義務」ではなく「責務」という法的位置づけ
法定点検は法的な「義務」ではなく「責務」として定められています。
点検を受けなくても罰則を科されることはありません。
「義務」と「責務」の違いは、行政処分による罰則の有無です。
義務の場合は違反すると罰則や行政処分が科されます。責務は法律で努力や推奨が求められているものの、違反しても罰則や行政処分はありません。
罰則はありませんが、安全に関わる重要な制度であることに変わりはなく、メーカーからの点検通知を受け取ったら積極的に対応することが望ましいでしょう。
法定点検を受けないとどうなる?
点検を受けないと、重大な故障や不具合を見逃すリスクが高まります。
特に石油給湯器は、不完全燃焼による一酸化炭素中毒や火災などの重大事故を引き起こす危険性があり、注意が必要です。
事故が発生した場合、所有者側に点検義務を怠ったという過失責任が問われる可能性もあります。
安全、安心に給湯器を使い続けるために、通知が届いた際は点検を受けるようにしましょう。
法定点検を受けるべき理由
法定点検を受けることで、目に見えない内部の経年劣化や不具合を専門家が発見できます。
事故を未然に防ぎ、安全に給湯器を使い続けることができるのです。
点検結果に基づいて部品交換や修理の必要性を判断することで、突然の故障を予防できる利点もあります。
点検費用はかかりますが、事故や緊急修理にかかる費用と比べれば経済的とも言えるでしょう。
近年、法定点検を装った詐欺が増加しているため、正規のメーカー点検通知を確認することで消費者被害を防げる効果もあります。
不審な点検の勧誘があった場合は、メーカーに直接問い合わせて確認することが重要です。
給湯器の法定点検の内容と費用
法定点検ではどのような項目をチェックするのか、費用はどれくらいかかるのか具体的に見ていきましょう。
法定点検の主な点検項目
石油給湯器の法定点検では、省令で定められた基準と各メーカー独自の基準をあわせた点検が実施されます。
主な点検項目には以下の通りです。
- 燃焼制御装置の動作状況確認
- 排気筒の設置状態や劣化チェック
- 燃料配管接続部の緩みや漏れの有無
- 水通路部の腐食や水漏れ状況
- 燃焼状態や着火性能の確認
他にも、「機器の外観」や「可燃物の有無」「接続部の状態」など多岐にわたる項目が点検されます。
技術者が専用の機器を使用して細部までチェックするため、自己点検では発見できない不具合も見つけられるのがメリットです。
法定点検の費用相場
法定点検は有償サービスであり、標準的な料金は約9,000円~15,000円程度が相場となっています。
費用の内訳は以下の通りです。
費用項目 | 金額の目安(税込) |
---|---|
出張費 | 3,300円~ |
技術料 | 6,270円~8,800円 |
諸経費 | 約1,100円前後 |
合計 | 約9,000円~15,000円 |
例えば「パロマ」の場合、ガス給湯機の標準料金は出張費3,850円、技術料8,800円、諸経費1,100円で合計13,750円(税込)となっています。
設置状況や作業時間によって追加料金がかかる場合もあります。
離島や日曜・祝日、特殊な事情がある場合は事前に費用を確認しておくと良いでしょう。
点検後の追加費用
点検の結果、部品の劣化や故障が見つかった場合は、別途修理費用が発生します。
点検では各項目について「適合・不適合」が記載された結果報告書が提供され、不適合項目がある場合は修理や交換が勧められます。
修理や交換は強制ではありませんが、安全のためには推奨される対応です。
費用が発生する場合は事前に見積もりを提示してもらうとよいでしょう。
離島や特殊な設置場所の場合、駐車料金や高速料金などの実費相当額が別途請求されることがあります。
こうした条件がある場合は、点検依頼時に確認しておくと良いでしょう。
法定点検と定期点検の違い
法定点検以外にもメーカーが推奨する点検があります。
それぞれの違いや適切な点検時期について見ていきましょう。
法定点検と「あんしん点検」の違い
法定点検は法律に基づいて定められた石油給湯器などの点検で、製造から9~11年の間に1度のみ実施します。
一方、「あんしん点検」はメーカー各社が独自に提供する任意の点検サービスです。
法定点検の対象とならない給湯器や、すでに法定点検を終えた機器に対して提供される有料のサービスです。
点検内容は法定点検と同等の基準で行われることが多く、時期や対象機種に制限はありません。
10年以上使用している給湯器は、法定点検対象外であってもあんしん点検を受けることで安全性を高めることができます。
適切な点検時期
給湯器の製造から9~11年の期間内に、法定点検を受けましょう。
あらかじめ所有者情報をメーカーに登録しておくと、適切な点検時期になったときにお知らせが送られてきます。
あんしん点検は明確な時期は定められていませんが、製造から10年前後を目安に受けることが望ましいでしょう。
部品の保有期間は法律で製造終了後約10年と定められているため、10年経過前に点検を受けておくと、部品交換が必要な場合にも対応しやすくなります。
給湯器の種類や使用環境によっても適切な点検時期は異なりますが、使用年数が10年を超えたら早めに専門業者による点検を受けることをおすすめします。
特に毎日使用する機会が多い給湯器は、安全面を考慮した定期的なメンテナンスが重要です。
セルフチェックとプロの点検
日常的な点検として、異音や異臭、水漏れなどがないか確認し、本体の外観に錆や変色がないかチェックすることが大切です。
リモコンにエラーコードが表示された場合やお湯の出が悪くなった場合は、早めにプロの点検を依頼しましょう。
プロの点検では、専門的な機器を使って内部の劣化状況や燃焼状態など、専門知識がなければ判断できない項目も確認できます。
10年以上経過した給湯器は、法定点検の対象かどうかにかかわらず、専門業者による点検を受けることが安全です。
給湯器に不具合を感じたらすぐに使用を中止し、専門業者に連絡することが重要です。
自己判断で修理を試みることは危険を伴うため避け、常に安全第一で対応しましょう。
まとめ
給湯器の法定点検は、経済産業省の「長期使用製品安全点検制度」に基づくもので、現在は石油給湯機と石油ふろがまが対象です。義務ではなく「努力義務」とされていますが、安全のためには受けることが強く推奨されています。
製造から9〜11年の間に一度実施され、点検費用は有料です。
点検では、燃焼制御装置や配管接続部などさまざまな項目を確認し、不具合が見つかれば修理や部品交換がすすめられます。
給湯器を安全に長く使うためには、法定点検に加えて10年経過時の点検や、日常的なセルフチェックも重要です。
異音や異臭、水漏れなどの異常を感じた場合は、すぐに専門業者に相談することが事故防止につながります。